#Episode 1 《スケボーパーク》

#1 《スケボーパーク》–Season 1: Seeds–

僕の名前はBull。これは、僕が「自由」という言葉の意味を履き違え、加速し続けることでしか自分を証明できなかった、何者でもなかった頃の話だ。

今、僕はトレーダーとして5億という資本を動かし、画面上の数字の揺らぎの中に世界の真実を見ているが、その「眼」の原型は、すべてあの錆びついた公園で形作られた。

2000年。

ミレニアムの狂騒が一段落し、世界が新しい1000年に足を踏み入れたばかりの、どこか落ち着かない空気の中にあった。

ポケベルから携帯電話へ、アナログからデジタルへ。

すべてが急速に置き換わっていく過渡期。僕は、日本のどこにでもある、不自由のない一般的な家庭に育った。

特技もなく、引っ込み思案。

教室では窓の外を流れる雲を眺め、チャイムの音に安堵する。

自分の感情を素直に言葉にすることが何よりも苦手な、透明な少年だった。

そんな僕にとって、唯一、肺の奥まで深く息を吸い込める聖域があった。

地元の、錆びついたベンチが並ぶだけの変哲もない公園だ。

放課後、学校という名の窮屈な檻から解放されると、僕はすぐさま制服を脱ぎ捨て、es’(エス)の分厚いソールが特徴的なスケシューに履き替える。

親父に頼み込んで買ってもらったエレメントのデッキ。

コンクリートの感触をダイレクトに伝えるその板は、当時の僕にとって唯一の「翼」だった。

公園が近づくにつれ、乾いた音が聞こえてくる。

「ガラガラ、ガラガラ……ッ、コンッ!」

ウィールがアスファルトを噛み、テールが弾ける破裂音。そのリズムは、僕の心臓の鼓動と共鳴し、内気な僕の奥底に眠る「野性」を呼び覚ました。

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パークに集まっていたのは、大人たちのルールからはみ出した、自由な匂いのする連中ばかりだった。

ダボダボのデニムに、少し汚れたTシャツ。言葉にできない苛立ちも、行き場のない高揚感も、僕はただデッキを蹴り、風を切ることで表現していた。

オーリー1つ決めるために、膝を擦りむき、何度も何度もコンクリートに叩きつけられる。

「痛み」だけが、自分が生きていることを証明する唯一の確かな感触だった。

だが、日が落ちると公園の空気は重力を増し、一変する。

スケーターたちの軽快な音は、次第に暴力的な重低音にかき消されていく。

HONDAのZXの甲高い吸気音、大型バイクの重厚な排気音。夜の帳とともに、公園はアウトローたちの聖域へと変貌した。

当時はHIP HOPがまさにストリートを飲み込もうとしていた時代だ。Dragon Ashの『Grateful Days』が街中に溢れ、『池袋ウエストゲートパーク』に影響された連中がカラーギャングを気取り、街の色彩を塗り替えていた。

学校の友達が話す「明日のテスト」や「好きな女子」の話が、酷く遠い世界の、色彩を失った記号のように思えた。

僕は磁石に引き寄せられるように、徐々に不良仲間たちの「遊び」に身を投じていった。

タバコの煙の向こう側に見える、大人が隠している「汚いけれど自由な世界」。
そこには、学校では決して教えてくれない「力」の匂いがした。


今、投資家としての視点で当時を振り返れば、あの公園は「リスクとリターン」を学ぶ最初の市場(マーケット)だった。どのグループに属し、どのタイミングで加速し、どの瞬間に沈黙を守るか。

当時の僕は無意識に、コンクリートの上で「生存戦略」を練り始めていたのだ。

だが、その時の僕はまだ知らない。
公園で感じたあの加速の快感が、制御不能なスピードとなって僕の人生という名のチャートを破壊し、奈落へと突き落とすまで、もう一秒の猶予も残されていないということを。

14歳の冬。僕は、運命という名の巨大な壁に、正面から激突することになる。

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つづく…

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